抄録
本研究の目的は従来型および光重合型グラスアイオノマーセメントの侵食過程を明らかにすることである.1種類の光重合型および2種類の従来型グラスアイオノマーセメントをpH 4とpH 6のクエン酸緩衝液に浸せきした.フッ素の溶出はpHに無関係に両タイプのセメントでほぼ同程度であった.他のイオン(Al, Sr, SiおよびP2O5)の溶出量はpH 4においては,従来型よりも光重合型のセメントの方が少なかった.しかし,pH 6においては光重合型セメントと従来型セメントの溶出量は同程度であった.pH 4においては,光重合型セメントの溶解はセメントマトリックス中における溶出イオンの拡散によって律速された.一方,従来型では拡散および表面でのマトリックスの分解反応が同時に進行した.侵食後のセメント表面は上記の溶解過程に良く対応していた.pH 6では,いずれのセメントも拡散が溶解を律速していた.