抄録
矩形波電流分極法を用いてCu, MoおよびMnを含有するNi-Cr合金の分極抵抗を37°リンゲル液中で測定し,耐食性を評価した。その結果,いずれの元素もNi-Cr合金の耐食性を向上させることが明らかとなった。腐食電位およびアノード分極曲線の測定結果から, Cu, MoはNi-Cr合金のアノード反応を抑制して安定な不動態に寄与するのに対し,Mnはカソード反応を抑制することが明らかとなった。また,CuおよびMnはNi-Cr合金の耐孔食性を向上させるが, Mnにはその作用がないことが明らかとなった。
分極抵抗の測定結果と重量減少量から求めた腐食速度の間には良い相関が得られた。Ni-Cr合金では,分極抵抗から腐食速度に変換する定数Kの値は25mVとなった。