抄録
適切な咬合高径を決定することは,補綴物を製作するうえで最も重要なことの一つである。その高径を決定するためには通常キャリパータイプのバイトゲージが用いられるが,同一患者の高径を数回計測すると,いかに注意深く測ってもその記録値には相当のバラツキを生じていることが多い。計測指示点の設定位置が不適当なことと,前回と同一位置に設定出来ないバイトゲージの構造的な問題が原因しているように思われる。これら従来のバイトゲージの欠点を改良したものが,新しく考案したKOMゲージである。
明確なセントリックストップを有する有歯顎者5名を被験者として,6名の計測者がそれぞれ10回(最初5回,30分後に5回)繰り返し計測して,このゲージの再現精度を検討した。これにより,KOMゲージは,従来のバイトゲージに比べて有意にすぐれた再現精度を示し,極めて有用であることが証明された。このゲージの使用によって,咬合高径計測時における誤差発生の危険性が著しく減少するものと期待される。