歯質への接着性を強化するためには,有効なボンディング材の開発もさることながら,被着面としての象牙質の前処理はさらに重要である。今回,新鮮抜去牛前歯の象牙質面に形成したsmear layerに,Nd-YAGおよびCO
2レーザーを照射し,その形態学的変化と細管封鎖効果を,SEMおよび色素浸透試験によって観察した。
その結果,smear layerは蒸散し,dentinal plugは象牙細管中に融着,固定されている所見が認められた。この所見は,照射エネルギー密度が高いほど著明であった。レーザー照射面からの1%メチレン・ブルーの浸透試験の結果,非照射面からの色素浸透が深部におよんでいるのに対し,レーザー照射面では,細管内への色素浸透は阻止されることが認められた。この細管封鎖効果は,低いエネルギー密度で照射した場合にも認められ,レーザー照射による象牙質前処理は,歯髄保護の点でも有用ではないかと考えられた。
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