抄録
ハイドロキシアパタイト(HAP)粉末の水溶液中における湿式合成において,HAP粉末の物性に及ぼす合成温度および二酸化炭素の影響を検討した。二酸化炭素が合成系に存在しない場合,合成温度が高くなるとHAP粉末の結晶性がよくなる。一方,合成温度が低い場合,カルシウムとリンの比(Ca/P)が小さいHAP粉末が得られる。FT-IRで測定したリンと水酸基の比(P/OH)はCa/Pが異なるHAP粉末でも一定であり,このことから低い温度での合成ではCa欠損HAPが生成していることがわかった。100°Cで合成したCa欠損のないHAP粉末は1200°Cで3時間安定であったが,40°Cで合成したCa欠損HAP粉末は800°Cで一部リン酸三カルシウムに分解した。
一方,合成中に二酸化炭素が存在するとAタイプおよびBタイプの炭酸含有HAPが生成した。低い温度で合成した場合,炭酸カルシウムも副生した。