抄録
[14C]フィナステリドのsing/kgを雄性ラットに22日間反復経口投与したのちの吸収,分布および排泄について検討した.また,フィナステリドを7日間経口投与したのちの肝薬物代謝酵素系に対する影響についても検討した.
1.初回および最終投与後の血漿中薬物動態学的パラメータの比較から,反復投与によりTmaxの減少およびCmaxの上昇の傾向が認められたが,有意差はなく,さらにt1/2およびAUCが一致していたことから,フィナステリドの吸収および排泄速度は反復投与により変化しないと考えられる.
2.尿および糞中への排泄は,投与期間中ほぼ一定であり,22日間投与後96時間までに総投与量の1.7%が尿に,88.5%が糞中に排泄され,主排泄経路は糞中排泄であった.
3.各組織中放射能濃度は,初回投与後に比べて最終投与後で高い値を示し,特に投与後24時間の脂肪では61倍高値を示した.また,最終投与後の組織からの放射能の消失は,血漿中のそれと比較して遅延する傾向にあった.しかし,最終投与後96時間の体内残存量は総投与量の0.3%であったことから,体内への蓄積は極めて低いものと考えられる.
4.フィナステリドの80mg/kgを7日間反復投与すると,アニリン水酸化酵素活性のみが約1.6倍上昇したが,1週間の回復期間により活性は減少した.なお5mg/kg投与群では肝薬物代謝系に影響を与えなかった.