薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
10 巻, 1 号
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  • 原 健一, 長谷川 拓郎, 劔持 とし江, 畑 俊輔, 江角 凱夫, 神 義容, 根本 裕之
    1995 年10 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットに14C塩酸ドルゾラミド(MK-507)を静脈内および経口投与した時の吸収,分布,代謝および排泄について検討した.また,ドルゾラミドおよびそのN一脱エチル体と血漿中蛋白との結合性についても検討した.
    1.14C塩酸ドルゾラミド0.1~5mg/kgを雄性ラットに静脈内投与した際,血液中放射能濃度のAUCは0.5mg/kgまではほぼ投与量に依存して増加したが,1mg/kg以上の投与量では飽和が認められた.血液中放射能のほとんどは赤血球中に存在し,t1/2は10.5~11.3日と極めて遅かった.
    2.静脈内,経口いずれの投与経路でも血中放射能濃度推移に雌雄差は認められず,経口投与時の吸収はほぼ完全であった.
    3.14C塩酸ドルゾラミド0.51ng/kgを静脈内投与した際,放射能の大部分は血液中に存在した.組織内濃度は腎臓が最も高く,次いで肺,脾臓,骨髄,胃,肝臓,盲腸,大腸に高かった.ほとんどの組織は血液と同様な経時的推移を示した.
    4.14C塩酸ドルゾラミド0.5mg/kgを静脈内投与後31日までに投与した放射能の74.7%が尿中に,11.8%が糞中に排泄された.経口投与後24時間までの尿中放射能排泄率は0.5mg/kg投与時24.7%,5mg/kg投与時73.8%であった.
    5.血液,尿,組織中代謝物としてN一脱エチル体が認められたが,総放射能に対する代謝物の割合は0.5mg/kg投与時では低く,5mg/kg投与時では増加した.
    6.血漿中蛋白との結合は,ドルゾラミド,N一脱エチル体とも弱く,30%以下であった.また,主結合蛋白はアルブミンであった.
  • 原 健一, 長谷川 拓郎, 劔持 とし江, 畑 俊輔
    1995 年10 巻1 号 p. 18-28
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットにおけるドルゾラミドおよびそのN-脱エチル代謝物とラット赤血球との結合性について検討した.さらに,ラットに塩酸ドルゾラミドを静脈内投与した際のドルゾラミドおよびL-706,803の血中濃度推移について検討した.
    1.ドルゾラミドのラット赤血球中への取り込みはL-706,803よりも速かった.
    2.ドルゾラミド,L-706,803ともにラット赤血球内では2種類の結合部位が認められ,高親和性部位および低親和性部位の最大薬物結合濃度はそれぞれ約60および30μMであった.
    3.ドルゾラミドおよびL-706,803の低親和性部位のKd値は,それぞれ0.387および0,497μMであった.ドルゾラミドおよびL-706,803の高親和性部位のKd値はそれぞれ低親和性部位の約1/100および1/250であった.
    4.塩酸ドルゾラミドをラットに静脈内投与した際,0.5mg/kgでは血漿中にドルゾラミドおよびL-706,803は認められなかった。5mg/kg投与時では僅かに認められ,消失半減期はドルゾラミドが1.0時間,L-706,803が2.6時間であった.
    5,塩酸ドルゾラミド0.5mg/kgを静脈内投与した際,血液中ドルゾラミドおよびL-706,803の消失半減期はそれぞれ157および116時間であった.5mg/kg投与時の消失半減期はそれぞれ101および99時間であった.
    6.0.5mg/kg投与時の血液中ドルゾラミドおよびL-706,803のAUCは,それぞれ1093および115μg·hr/mlであったが,5mg/kg投与時ではドルゾラミドのAUCは0.5mg投与時の約1/2に減少した.L-706,803のAUCは逆に約5倍上昇した.
    7.0.5mg/kg投与時の血液中ドルゾラミドのVdssおよびCLtotはそれぞれ99.9ml/kgおよび0.46ml/hr/kgであった.5mg/kg投与時のVdssおよびCLtotはそれぞれ0.5mg/kg投与時の15および25倍であった.
  • 阿部 昌宏, 伊東 富晴, 安生 孝子, 松木 容彦, 若生 隆吉, 金子 清久
    1995 年10 巻1 号 p. 29-44
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Pirmenol(CI-845)をイヌに経口投与し,尿中代謝物の非抱合画分についてマスクロマトグラフィーを行い,標準品との比較により,未変化体と6種の代謝物,すなわち,ジメチルピペリジン環のモノヒドロキシ異性体2種,M1-1(trans4-OH体)とM1-2(cis4-OH体),ジメチルピペリジン環の脱水素体(M2),フェノール体(M3),グアヤコール体(M5)およびアミノ体(M9)の構造を確認した.抱合画分については,AmberliteXAD-2およびシリカゲルカラムクロマトグラフィーとHPLCにより精製して,3種の抱合代謝物を単離し,LC/MSならびにナフトレゾルシン反応により,これらがグルクロニドであることを確認した.また,これらをβ-グルクロニダーゼ処理し,遊離したアグリコンをGC/MSにより標準品と比較した.これらの結果から,抱合画分の代謝物は,M1-1,M3およびM5の3種のグルクロニドであることが明らかとなった.
  • 茂木 正行, 伊東 富晴, 安生 孝子, 松木 容彦, 若生 隆吉, 金子 清久
    1995 年10 巻1 号 p. 45-55
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Pirmenolのラットにおける経口投与後の生体内動態とその性差について比較検討した.14C-Pirmeno1を投与後の尿中代謝物について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてその放射性ピークと各代謝物標準品の保持時間の比較を行った結果,主代謝物として3種のグルクロニド(M3G,M4G,M5G)が確認され,その他に数種の代謝物が少量見られた.主代謝物については,非標識Pimenolを投与後の尿から単離精製し,そのマススペクトルより構造の推定と確認を行った.14C-Pirmenolを雌雄ラットに投与したときの血漿中放射能レベルは,雄に比べ雌の方が若干高いものの,両者の濃度推移は類似しており,ともに二峰性が認められた.投与後24時間までの尿中への放射能排泄率は雄では14%,雌では25%,一方,胆汁中への放射能排泄率は雄では77%,雌では83%であり,雌雄いずれにおいても胆汁が主排泄経路であった.また,尿および胆汁中への排泄率は,雄に比べ雌の方が幾分高いものの,排泄パターンは雌雄ラットで類似していた.HPLCによりこれら血漿,尿および胆汁中の代謝物を測定したところ,いずれの試料においても,M3G,M4GおよびM5Gの3種のグルクロニドが主代謝物であり,これらの合計は各試料の総放射能の45~90%を占めた.したがって,ラットにおけるPirmenolの主代謝経路はベンゼン核の水酸化と,つづいてのメチル化またはグルクロン酸抱合反応と考えられる.また,主代謝物のM3G,M4G,M5Gの量比には若干の雌雄差が見られ,雄ラットではM5Gが主であるのに対して,雌ラットではM3GとM5Gが主でほぼ同レベルであった.
  • 加藤 基浩, 三浦 久美, 神山 博, 岡崎 彬
    1995 年10 巻1 号 p. 56-64
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Pharmacokinetics of large molecules, such as rG-CSF and erythropoietin after subcutaneous administration, was discussed based mainly upon the observations of kinetics of rG-CSF and other molecules. The mean absorption time (MAT) and the variance of absorption time (VAT) of rG-CSF were calculated, and the ratio of VAT/(MAT)2 was less than 1, suggesting that the absorption process might be catenary process. The absorption processes of large molecules might consist of molecule independent and dependent processes. The kinetics of erythropoietin suggested that the injection volume might contribute to the molecule independent process.
  • 石井 康行, 原 健一, 石井 美樹夫, 畑 俊輔
    1995 年10 巻1 号 p. 65-74
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    [14C]フィナステリドのsing/kgを雄性ラットに22日間反復経口投与したのちの吸収,分布および排泄について検討した.また,フィナステリドを7日間経口投与したのちの肝薬物代謝酵素系に対する影響についても検討した.
    1.初回および最終投与後の血漿中薬物動態学的パラメータの比較から,反復投与によりTmaxの減少およびCmaxの上昇の傾向が認められたが,有意差はなく,さらにt1/2およびAUCが一致していたことから,フィナステリドの吸収および排泄速度は反復投与により変化しないと考えられる.
    2.尿および糞中への排泄は,投与期間中ほぼ一定であり,22日間投与後96時間までに総投与量の1.7%が尿に,88.5%が糞中に排泄され,主排泄経路は糞中排泄であった.
    3.各組織中放射能濃度は,初回投与後に比べて最終投与後で高い値を示し,特に投与後24時間の脂肪では61倍高値を示した.また,最終投与後の組織からの放射能の消失は,血漿中のそれと比較して遅延する傾向にあった.しかし,最終投与後96時間の体内残存量は総投与量の0.3%であったことから,体内への蓄積は極めて低いものと考えられる.
    4.フィナステリドの80mg/kgを7日間反復投与すると,アニリン水酸化酵素活性のみが約1.6倍上昇したが,1週間の回復期間により活性は減少した.なお5mg/kg投与群では肝薬物代謝系に影響を与えなかった.
  • 吾郷 正之, 辻岡 知郎, 向井 英也, 森野 昭
    1995 年10 巻1 号 p. 75-89
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットおよびイヌに14C-lactitolを静脈内および経口投与し,その吸収,代謝および排泄について検討した.
    1.静脈内投与した場合,血漿中放射能の大部分は未変化体であり,未変化体濃度は単一指数関数的に低下した.消失半減期は,ラットおよびイヌでそれぞれ0.352および0.594時間であった.
    2.経口投与した場合,血漿中の放射能濃度は緩やかに上昇し,ラットで6.0時間,イヌで9.3時間に最高値に達し,その後緩慢な消失を示した.血漿中で,未変化体濃度は低く,放射能のほとんどは代謝物であった.未変化体濃度より求めたsystemic availabilltyは,ラットおよびイヌでそれぞれ1.69および2.72%と低かった.
    3.10~1000mg/kgの用量でラットに経口投与した場合,血漿中放射能濃度は用量に比例した.また,ラットの血漿中放射能濃度推移に性差は認められなかった.
    4.ラットに経口投与後,小腸部位に存在する放射能はほとんどが未変化体であったが,盲腸に移行した放射能の大部分sorbitolo1や揮発性物質等の代謝物であり,この揮発性物質は短鎖脂肪酸であると推察された.したがって本薬物は,盲腸において腸内細菌叢により著しく代謝されることが明らかとなった.
    5.静脈内投与した場合,両動物種とも放射能はほとんど未変化体として尿中へ排泄された.ラットに経口投与した場合,放射能の主たる排泄経路は呼気中であり,投与後168時間までの尿,糞および呼気中への放射能の排泄率はそれぞれ投与量の5.1,16.1,65.0%であった.
    6.ラット,イヌおよびヒトの血清を用いてlactitolのin vitro血清蛋白結合試験を行ったところ,0.5~50μg/mlの濃度範囲において,結合は認められなかった.
  • 辻岡 知郎, 吾郷 正之, 向井 英也, 森野 昭, 江角 凱夫, 高市 松夫, 関 英昌, 二宮 真一, 高尾 厚志, 大坪 美和
    1995 年10 巻1 号 p. 90-118
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットにおけるlactitolの単回経口投与後の分布,胎児および乳汁移行性,ならびに反復経口投与後の体内動態および肝薬物代謝酵素系への影響について検討し,以下の結果を得た.
    1.雄性ラットに14C-lactitolを単回経口投与した際,中枢神経系,眼球,脂肪,骨格筋,動脈および精巣を除き,放射能の組織への移行は良好であり,大部分の組織で10時間に最高濃度を示した.各組織からの放射能の消失は緩慢であった.放射能の分布に性差は認められなかった.
    2.妊娠中のラットに14C-lactitolを経口投与した結果,胎児に母体血液よりも高い放射能が認められた.
    3.哺育中のラットに14C-lactitolを経口投与した結果,乳汁中放射能濃度は血漿中よりも高値を示した.
    4.14C-Lactitolを反復投与した際,組織内放射能には蓄積性および残留性が認められた.
    5.14C-Lactitolの単回あるいは反復投与によりラットの組織に残留する放射能は,生体成分化した(脂質や蛋白質等に組み込まれた)ものであることが示唆された.6.Lactitolを反復投与しても,肝薬物代謝酵素系に影響を及ぼさなかった.
  • 丹羽 俊朗, 橋本 知子, 藤原 友一, 片島 祥子, 坂本 博, 戸塚 善三郎, 徳間 洋二, 秦 武久
    1995 年10 巻1 号 p. 119-128
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    雄性ラットおよびイヌに14C標識FK037を20mg/kg単回静脈内投与後の分布および排泄を検討した.
    1.14C標識FK037を雄性ラットに静脈内投与した時,血漿中および血液中放射能濃度は速やかに消失し,投与後4時間の放射能濃度は投与後5分値の1%未満であった.血漿FK037濃度は二相性の消失を示し,消失相の半減期は0.43時間であった.血漿FK037濃度の血漿中放射能濃度に対する比は投与後5から30分では0.95以上であり,投与後初期では血漿中放射能のほとんどFK037であることが示されたが,1時間では0.90,2時間では0.76と徐々に減少した.投与後5分の組織内放射能濃度は腎臓が最も高く,肺,肝臓,心臓,脾臓および脳では血漿中放射能濃度より低い放射能濃度であった.投与後72時間までの尿および糞中にそれぞれ投与放射能の92.6および4.6%が排泄された.胆管カニュレーションを施したラットに投与した時,投与後48時間までの尿および胆汁中にそれぞれ投与放射能の98.6および1.8%が排泄され,投与後48時間までの尿中FK037排泄率は95.4%であった.
    2.14C標識FK037を雄性イヌに静脈内投与した時,血漿中および血液中放射能濃度は速やかに消失し,投与後8時間の放射能濃度は投与後5分値の約1%であった.血漿中FK037濃度は二相性の消失を示し,消失相の半減期は1.23時間であった.血漿中FK037濃度の血漿中放射能濃度に対する比は投与後5分から2時間では0.97以上であったが,4時間では0.87,6時間では0.65,8時間では0.45と徐々に減少した.投与後168時間までの尿および糞中にそれぞれ投与放射能の99.8および2.4%が排泄され,投与後168時間までの尿中FK037排泄率は87.7%であった.
  • 戸塚 善三郎, 丹羽 俊朗, 坂本 博, 徳間 洋二, 秦 武久, 黒沢 敏, 二宮 真一, 塙 真也, 石崎 正男
    1995 年10 巻1 号 p. 129-141
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新規抗生物質FK037の14C標識体20mg/kgを雄性ラットに1日1回14日間反復静脈内投与し分布,代謝,排泄について検討した.
    1.反復投与した時初回,2回,10回および14回投与後8時間における血液中放射能濃度はそれぞれn.d.,0.24,0.42および0.43μgeq./mlであり10回投与以降ほぼ定常状態に達した.7回および14回投与後のAUC0-24hr はそれぞれ19.2および24.4μg eq.·hr/mlで,単回投与後のAUC0-∞は22.6μgeq.·hr/mlとほぼ同程度であった.
    2.反復投与した時投与後8時間における組織内放射能濃度は大部分の組織で投与回数に伴う濃度上昇が認められたが,初回,7回目および14回目の組織内放射能濃度を比較すると7回目でほぼ定常状態に達していると考えられた.14回投与後の腎臓,皮膚,膀胱,胃,肺,褐色脂肪,骨格筋,前立腺および耳下腺の組織内放射能濃度は初回投与後の3.1~5.5倍高く,他の大部分は2倍前後の濃度を示した.14回投与24時間後の組織内放射能濃度は14回投与5分後の組織内放射能濃度の4%以下であった.
    3.反復投与した時の血漿中および尿中の未変化体と代謝物の割合は変化せず,放射能のほとんどが未変化体であった.
    4.反復投与した時の尿および糞中へ排泄された放射能の割合は変化せず14回投与後24時間までの尿中には累積投与量の94.2%が排泄された.
  • 戸塚 善三郎, 丹羽 俊朗, 坂本 博, 徳間 洋二, 秦 武久, 黒沢 敏, 二宮 真一, 塙 真也
    1995 年10 巻1 号 p. 142-153
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットに14C-FK037を20mg/kg静脈内投与し,胎児移行および乳汁移行について検討した.
    1.妊娠13日目のラットに投与した時,投与5分後では胎児中放射能濃度は母体血漿中射能濃度の1%と低く投与24時間後には検出限界以下となった.妊娠18日目のラットに投与した時,投与5分後では胎児中放射能濃度は母体血漿中放射能濃度の1%未満と低く投与後24時間では最高濃度の19%に減少した.妊娠13および18日目のラットに投与した時の全身オートラジオグラムでは胎児に放射能は認められなかった,以上のことかFK037の胎児への移行性は少ないと考えられた.
    2.授乳期のラットに投与した時,乳汁中放射能濃度は投与1時間後に最高濃度0.93μg eq./mlを示したのち,8時間まで半減期5.6時間で消失し,24時間後では検出限界以下となった.乳汁中放射能濃度の最高濃度(投与量補正値)は他剤に比べて低く,FK037の乳汁中への移行性は少ないと考えられた.
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