抄録
本研究では傾斜的な組織による残留応力の緩和と複合組織によるアンカリングによる密着性の向上を目的としたHA/Ti複合皮膜の形成において, 皮膜形成時のプラズマガスの組成や溶射時の入力等のプロセシングパラメータが皮膜の密着強度に与える影響ついて調べた. ArにO2またはN2を(1∼6%)添加したプラズマ中にプラズマ中に80μmのHA粉末および約50μmのTi粉末(99.9%)をそれぞれ供給量をコントロールしつつ導入し, 水冷ステージ上のTi基板(JIS2種)にHA/Ti複合皮膜を溶射した. HA粉末およびTi粉末を供給する割合を制御しながら溶射を行うことで, 基板側でTiの割合が高く, 皮膜表面附近でHAの割合が高いHA/Ti複合皮膜を調製した. Ar-N2プラズマで調製した試料は平均の密着強度が40MPa以上を示し, 皮膜形成時の入力の増加に伴い増加する傾向を示した. ArプラズマならびにAr-O2プラズマで調製した試料は入力や基板温度等のプロセシングパラメータがほとんど等しいにも関わらず, 平均の密着強度は33MPa以下の値を示した.