薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
潰瘍性大腸炎治療薬5-[4-(2-Carboxyethylcarbamoyle)-phenylazo]Salicylic Acid Disodium Salt Dihydrate(BX661A)の体内動態(第3報):ラットに単回投与したときの分布および排泄
小嵜 正彦内田 研尾關 和久林 敏廣網野 光人
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1998 年 13 巻 2 号 p. 139-151

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抄録

ラットに5ASAあるいは4ABAを標識した14C-BX661Aまたは非標識体を単回経口あるいは静脈内投与したときの放射能,未変化体および主要代謝物の分布および排泄について検討した.
1.絶食雄性ラットに14C-BX661A(5ASA)を経口投与したときの放射能は,投与後10時間に消化管を除く大部分の組織で最高値を示した.投与後10時間まで血漿中の放射能濃度よりも高い濃度を示した組織は消化管を除いては肝臓および腎臓であった.14C-BX661A(4ABA)を投与したときも同様の結果を得たが,その放射能濃度は14C-BX661A(5ASA)に比べ低かった.
2.絶食雌雄ラットに14C-BX661A(5ASA)を経口投与したとき,投与後72時間までの放射能の尿および糞中排泄は雄性ラットではそれぞれ投与量の約32および66%,雌性ラットではそれぞれ約45および55%であった.一方,14C-BX661A(4ABA)を投与したときの尿および糞中排泄は,雄性ラットではそれぞれ投与量の約7および88%であった.雌性ラットにおいても同様の結果を得た.
3.絶食雄性ラットにBX661Aを50,100および200mg/kgの用量で経口投与したときの未変化体の尿および糞中排泄はともに投与量の0.6%以下であり,BX661Aのアゾ結合はほぼ完全に開裂した.5ASAおよびAc-5ASAの尿中排泄は0.0~2.2%および21.1~24.5%,糞中排泄は22.7~25.3%および20.0~32.1%であった.一方,4ABAおよびAc-4ABAの尿中排泄は0.8および3.4~4.3%以下,糞中排泄は67.3~78.5%および2.7~5.1%であった.
4.絶食雌雄ラットに14C-BX661A(5ASA)を100mg/kgの用量で経口投与したとき,Ac-5ASAの糞中排泄率は絶食雄性ラットに比べて有意に高かった.その他の化合物の排泄パターソには差が認められなかった.
5.絶食雄性ラットに14C-BX661Aを静脈内投与したとき,投与後72時間までの放射能の尿および糞中排泄は14C-BX661A(5ASA)では約43および55%,14C-BX661A(4ABA)では約29および66%であった.絶食雄性ラットにBX661Aを静脈内投与したとき,投与後8時間までの尿中には投与量の29.5%が未変化体として排泄された.一方,投与後72時間までの尿中にはAc-5ASAが11.5%,糞中には5ASA,Ac-5ASAおよびAc-4ABAがそれぞれ4.9,19.3および29.0%排泄された.
6.絶食雄性ラットに14C-BX661Aを経口投与したとき,投与後24時間までの胆汁中排泄率は両標識体ともに約3~4%であった.絶食雌雄ラットに14C-BX661A(5ASA)を静脈内投与したとき,放射能の投与後120分までの胆汁中排泄率は雌の80%に比べ雄は67%と低かった.
7.BX661Aのアゾ結合はヒトの糞と反応させることにより容易に還元され,5ASAが定量的に生成した.しかしAc-5ASAは検出されなかった.

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