2012 年 22 巻 p. 295-301
高等教育の就学率に対して, 経済成長が大きな影響を及ぼすことは広く知られている。そこで本稿では, 経済成長やそれに伴うGDPの増大に伴って, 高等教育の就学率が受ける影響について, 統計資料をもとに実証分析を行った。高等教育の就学率を国民1人あたりのGDP額などに回帰したところ, 強いプラスの効果が検出された。ところが, 説明変数に平均寿命や65歳以上の割合を加えると, 国民一人あたりGDP額の効果は消失し, 平均寿命や65歳以上割合, さらには刑務所収容率と高等教育就学率との間に統計的に有意な関連が見られた。この解釈として, 保健変数が子ども数の少なさを代理している可能性と, 刑務所収容率と合わせて国民の福利への支出水準を代理している可能性の二つが考えられる。