2019 年 29 巻 p. 162-168
入試問題の改変には問題形式の違いが引き出す思考過程に関する知見が必須である。本研究は,良問と言われる東京大学の国語記述式問題がいかなる思考過程を引き出しているかについて,同じ作者の文章が出題された大学入学センター試験の多肢選択式問題と比較した。思考発話実験の結果,前者の方が参加者から,問題文全体を読み,内容理解に基づいて解答を検討するという思考過程を誘発することがわかった。今後の入試問題の改変に向け,出題意図と出題形式や設問構成,そしてそこで誘発される思考過程とを一体的に検証することの重要性を指摘した。