高大接続答申によって本格的に着手された大学入試改革は,英語民間試験と記述試験の共通テストへの導入が2019(令和元)年末に相次いで見直されたことにより転換点を迎えた。政策が具体化する段階で,現場が直面する諸課題を克服できなかったことが直接の原因である。しかしながら,そもそも最初から答申が描く高校教育と大学入試の諸課題は,わが国の現状には合致していなかったのではないかという疑問が残されている。本稿では,相互に影響しながら進められてきた東アジアの大学入試政策にミスマッチの原因の一端を探ることとした。特に,中国の大学入試改革関連の政策文書を取り上げ,わが国の高大接続改革の政策的基盤との同型性,共時性に関する仮説的推論を試みる。