2004 年 12 巻 4 号 p. 187-190
12歳齢、避妊雌の雑種犬が、約6カ月前からの進行性の排便障害を主訴に来院した。腹部触診、X線、超音波、および直腸内視鏡の検査結果から、背側後腹部から骨盤腔内に生じた腫瘤が、直腸を腹側に圧迫していることが明らかになった。腹部正中からのアプローチによる腫瘤切除術を実施したところ、腫瘤は骨盤腔内の後半部分で固着していて摘出は困難であったので、肛門背側からのアプローチを加えた。このアプローチにより、腫瘤の骨盤腔内における固着部位を鈍性剥離可能となり、分離した腫瘤を腹部正中切開創から摘出した。腫瘤は病理組織検査によって平滑筋腫と診断された。本症例は術後12カ月間経過した現在、再発は認められず排便状態は良好に経過している。