動物臨床医学
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症例報告
チンチラ(Chinchilla lanigera)に発生した非定型抗酸菌症
岡村 健作相川 諒田中 美有井澤 武史山手 丈至桑村 充
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2020 年 29 巻 4 号 p. 167-170

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抄録

環境中に広く分布する非定型抗酸菌(Atypical mycobacteria : AM)によるAM症は,人,豚,鳥 のほか愛玩動物では犬や猫などでの発生が報告されている。しかし,本邦における完全室内飼育のチンチラでの発症報告は見当たらない。5頭のチンチラを飼育する一般家庭において,3頭が順に肺炎による呼吸障害を発症した。いずれも抗菌薬や抗真菌薬などに反応せず,それぞれ治療開始後14,44,186日で斃死に至った。2頭に対して剖検を行った。肉眼所見では肺や消化器官に乾酪様結節が存在し,病理組織検査で肉芽腫性炎症とマクロファージや類上皮細胞内に抗酸菌が確認されAM症と診断された。残りの同居チンチラ2頭は現在まで発症せず過ごしている。完全室内飼育動物においても重篤な呼吸器疾患として致死性のAM症が発症するリスクがあり,また,チンチラのAMに対する感受性は個体差があると考えられた。

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