2022 年 31 巻 2 号 p. 62-66
免疫介在性溶血性貧血との診断のもとでプレドニゾロンとミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンの投与を長期間にわたって受けた猫(雑種,去勢手術実施済み雄,4歳,体重4.9 kg)が医原性糖尿病を発症し,その治療の終了近くに顔面と頸部および肩部の瘙痒を主徴とする皮膚症状を呈した。アレルゲン特異的免疫グロブリンE検査と病変部の皮膚組織の病理組織学的検査などの種々の検査の結果,この皮膚疾患は,最近新たに提唱された猫アトピー性皮膚症候群である可能性がきわめて高いと考えた。糖尿病には様々な皮膚疾患が随伴して認められるが,この例はこれまでに知られている糖尿病随伴性皮膚疾患とは異なり,糖尿病随伴性と考えるより,糖尿病の治療にともなう糖質コルチコイド製剤と免疫抑制剤の休薬によって症状が増悪したように推察した。