動物臨床医学
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31 巻, 2 号
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特別寄稿
原著
  • 小野沢 栄里, 小松原 大介, 水越 美奈
    2022 年 31 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,飼い主でも評価可能な客観的かつ具体的な内容の褥瘡リスクアセスメントスケールの作成を行い,その有効性を検討した。介護が必要な高齢犬に起こっている事象を調査した結果,褥瘡がある場合はない場合と比較して,自力での食事摂取や排泄,体位変換が難しく,痩せており,骨突出や関節拘縮がある頭数が有意に多かった。これらの結果をもとに褥瘡リスクアセスメントスケールを作成した。獣医療従事者と非獣医療従事者および大学生による評価の結果,評価者間の得点の一致率は高かった。また,介護が必要な犬を対象に作成したスケールを使用した結果,褥瘡あり(中央値7点(範囲:4-10点))は,褥瘡なし(4点(1-6点))と比較して有意に高得点であり,10点満点中7点以上で褥瘡のリスクが高くなることが明らかとなった。以上より,本研究で作成したスケールは,飼い主でも褥瘡の発生が予測可能な新たなツールとして有用であると示唆された。

症例報告
  • 大下 航, 小路 祐樹, 神田 拓野, 岸田 藍, 岸田 康平, 橋本 淳史, 大塚 真子, 川北 智子, 平尾 礼示郎, 下田 哲也
    2022 年 31 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    13歳11カ月齢,雄のビーグルが血小板減少症とリンパ球増加症を主訴に当院を紹介来院した。血液検査では,軽度の非再生性貧血(Ht 28.7 %, Ret 1 %)と血小板減少症(117×103 /μl)及び重度のリンパ球増加症(503,148 /μl)が認められた。腹部エコーでは脾腫が認められ,脾臓摘出と骨髄検査を実施した。脾臓の病理組織学的検査所見および骨髄細胞診所見より脾臓原発のリンパ腫と診断した。CCNUとL-asparaginaseの投与によりリンパ球は基準値内に低下した。末梢血を用いたフローサイトメトリーの結果から細胞障害性T細胞由来であることが示唆され,最終的に肝脾T細胞リンパ腫と診断した。脾臓摘出と化学療法によって臨床症状が消失したものの,治療反応は徐々に悪化し274病日に死の転帰を取った。

  • 中村 有加里, 浅川 翠, 星 史雄, 深瀬 徹
    2022 年 31 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    免疫介在性溶血性貧血との診断のもとでプレドニゾロンとミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンの投与を長期間にわたって受けた猫(雑種,去勢手術実施済み雄,4歳,体重4.9 kg)が医原性糖尿病を発症し,その治療の終了近くに顔面と頸部および肩部の瘙痒を主徴とする皮膚症状を呈した。アレルゲン特異的免疫グロブリンE検査と病変部の皮膚組織の病理組織学的検査などの種々の検査の結果,この皮膚疾患は,最近新たに提唱された猫アトピー性皮膚症候群である可能性がきわめて高いと考えた。糖尿病には様々な皮膚疾患が随伴して認められるが,この例はこれまでに知られている糖尿病随伴性皮膚疾患とは異なり,糖尿病随伴性と考えるより,糖尿病の治療にともなう糖質コルチコイド製剤と免疫抑制剤の休薬によって症状が増悪したように推察した。

  • 山本 充哉
    2022 年 31 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    膀胱三角部に発生した犬の移行上皮癌にヒト上皮増殖因子2(HER2)阻害剤である分子標的薬のラパチニブを使用したところ169日間の安定が得られた。200日目に増大傾向が認められた際に,ラパチニブに加えて制御性T細胞浸潤阻害薬(CCR4阻害剤)である抗ヒトモノクローナル抗体のモガムリズマブを投与したところ腫瘍が縮小し,部分寛解が得られ334日の生存が可能であった。両薬剤同時投与による副作用はVCOG-CTCAEでの食欲不振がグレード1のみであり,対処可能範囲であり,投与中の状態は非常に良好であった。

資料
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