2022 年 31 巻 3 号 p. 97-101
7歳の雑種猫が圧迫排尿困難な排尿障害および尾の運動性低下を主訴に来院した。脊髄障害の関与を疑いCT検査を実施したところ, L5-6椎体間の脊柱管内に嚢胞様構造物を認め, その内部には不均一な低CT値を示す部位と高吸収の点状物質を認めた。 片側椎弓切除術により脊柱管内にアプローチすると腹側より脊髄を圧迫する物質を認めたため摘出を試みたところ, 被膜が破れ血様液体が漏出した。また, 脊髄の腹側から椎間板物質も採取された。以上の手術所見から椎間板ヘルニアに伴う硬膜外血腫が主訴の原因であったと考えた。本症例は猫での椎間板ヘルニアに伴う硬膜外血腫の報告としては初であり, 犬で報告されている硬膜外血腫のCT所見とも異なる所見が得られた。また, 圧迫排尿困難な排尿障害から推定される脊髄障害部位が実際の部位と異なっていたが, 猫では時折認められる事象であり, その点に留意する必要があると考えられた。