動物臨床医学
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31 巻, 3 号
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特別寄稿
症例報告
  • 岩永 優斗, 大谷 祐介, 坂大 智洋, 岡本 芽衣, 三木 伸悟, 真下 忠久
    2022 年 31 巻 3 号 p. 97-101
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    7歳の雑種猫が圧迫排尿困難な排尿障害および尾の運動性低下を主訴に来院した。脊髄障害の関与を疑いCT検査を実施したところ, L5-6椎体間の脊柱管内に嚢胞様構造物を認め, その内部には不均一な低CT値を示す部位と高吸収の点状物質を認めた。 片側椎弓切除術により脊柱管内にアプローチすると腹側より脊髄を圧迫する物質を認めたため摘出を試みたところ, 被膜が破れ血様液体が漏出した。また, 脊髄の腹側から椎間板物質も採取された。以上の手術所見から椎間板ヘルニアに伴う硬膜外血腫が主訴の原因であったと考えた。本症例は猫での椎間板ヘルニアに伴う硬膜外血腫の報告としては初であり, 犬で報告されている硬膜外血腫のCT所見とも異なる所見が得られた。また, 圧迫排尿困難な排尿障害から推定される脊髄障害部位が実際の部位と異なっていたが, 猫では時折認められる事象であり, その点に留意する必要があると考えられた。

  • 三谷 浩気
    2022 年 31 巻 3 号 p. 102-1105
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    4歳齢のフレンチ・ブルドッグで体表リンパ節の腫大を認めた。リンパ節の病理組織検査によりび漫性小細胞型B細胞リンパ腫(DSBCL)と診断した。CHOP療法による化学療法を実施したところ良好な反応を示し一時完全寛解に達した。その後は2度の再燃を繰り返し,第489病日に死亡した。DSBCLは小細胞型リンパ腫であるが,臨床的に高悪性度リンパ腫として治療すべき疾患と考えられた。

  • 関 瀬利, 安田 暁子, 藤田 道郎
    2022 年 31 巻 3 号 p. 106-111
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    症例は2歳の未避妊雌の雑種猫で, 外傷性横隔膜ヘルニアの診断と治療のために紹介来院した。胸部X線検査により胸腔内に消化管, 肝臓などの腹腔内臓器の脱出が疑われ, さらに心陰影も不明瞭であったことから外傷性横隔膜ヘルニアと診断し, 腹部正中切開によるヘルニア臓器の整復と横隔膜の閉鎖を実施した。ヘルニア臓器の整復後に腸管の蠕動運動と血管の脈動が低下し, 腸が蒼白状態となった。続いて, 低血圧と頻拍が認められた。昇圧処置として晶質液と膠質液の急速投与, ならびにドパミン, ノルエピネフリン, そして全血が投与されたが, 血圧の改善は認められなかった。 術後,血清乳酸値は徐々に上昇し, 代謝性アシドーシスが進行したため, コハク酸メチルプレドニゾロン, 重炭酸ナトリウムを投与し,昇圧目的にバソプレシンを投与した。さらに, 低血圧のみならず高カリウム血症, 低血糖症, そして高炭酸ガス血症も伴うようになり,カテコールアミン耐性の循環不全が持続して症例は術後約9時間で死亡した。外傷性横隔膜ヘルニア整復後には難治性の周術期低血圧, 高乳酸血症, 高カリウム血症, ならびに高炭酸ガス血症に注意して周術期管理を行う必要があろう。

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