日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
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土壌腐植の金属錯化容量のpH依存性
山田 秀和宮田 佳久服部 共生
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1987 年 58 巻 2 号 p. 205-208

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抄録

既報で提案した土壌腐食の金属錯化容量の定量法を応用して, 土壌腐食の錯化容量のpH依存性を検討した. さらに, コロイド滴定法を利用して腐食の主として酸性官能基であるカルボキシル基とフェノール性水酸基の解離に起因する負荷電量のpH依存性についてもあわせて検討を行った. その結果, 以下の知見を得た. 1. 腐植酸, フルボ酸の金属錯化容量は, pH 3から7にかけてpHの上昇とともに増大した. この金属錯化容量の増大傾向は, コロイド滴定法から求めた腐植酸, フルボ酸のカルボキシル基に由来する解離当量の増大傾向とよく一致した. これらのことから, カルボキシル基が腐植酸, フルボ酸の錯化部位であると推定した. 2. 腐植後, フルボ酸の金属錯化容量は, pH 7以上で低下する傾向を示した. 高pHでは銅がCuOH^+やCu(OH)_2を生成する副反応が加わるため, 腐植-銅錯体の条件安定度定数が低下することが原因しているものと考えられた. 3. pH 7以上で低下傾向を示す腐植酸, フルボ酸の金属錯化容量も, pHが9〜10以上になることがわずかに上昇する傾向がみられた. この傾向は芳香環構造の発達していると考えられる腐植化度の高い腐植酸で顕著に認められた. またこの傾向は腐植酸のコロイド滴定曲線のpH 9〜10以上でみられるフェノール性水酸基に由来する解離当量の増大ともよく対応した. これらのことからpH 9〜10以上では,フェノール性水酸基が錯形成に関与している物と推定した.

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© 1987 一般社団法人日本土壌肥料学会
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