日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
有機質資材の腐熟と窒素形態変化能との関係
青山 正和吉田 光二平井 隆平熊田 恭一
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 59 巻 4 号 p. 353-362

詳細
抄録

堆積期間の異なる都市ごみコンポスト、豚ぷん・おがくずコンポストと牛ふん厩肥について、原物試料の風乾処理とインキュベーションおよび土壌混和インキュベーションによって、窒素形態変化能の推定を行った。風乾法により推定された窒素形態変化反応は、未熟と考えられた試料では、例外的に硝酸化成とアンモニア化成が認められた試料もあったが、アンモニア揮散または有機化を主としていた。しかし、十分腐熱した試料では窒素形態変化反応はほとんど認められなかった。これに対して、インキュベーション法による窒素形態変化能の推移は、おがくずを含むか否かにより異なった。おがくずを含まない都市ごみコンポストと牛ふん厩肥の場合には、もっとも未熟な試料ではアンモニア揮散、脱窒もしくは有機化を主とし、もっとも腐熱が進行した試料ではアンモニア化成と硝酸化成のみが認められ、それらの中間の試料では前二者で認められた反応もしくはNO_2-Nの集積が混在していた。一方、豚ぷん・おがくずコンポストの場合には、30週堆積後でもアンモニア化成、脱窒もしくは有機化のみが認められた。土壌混和法では、おがくずを含まない場合、2週間培養後までにインキュベーション法で推定された特徴的な反応が認められ、その後はアンモニア化成と硝酸化成のみが認められた。しかし、豚ぷん・おがくずコンポストの場合、堆積前試料では4週間培養後以降でも有機化を主要な反応とし、30週堆積後の試料でも4週間培養後まで有機化が認められた。以上の結果から、おがくずのような木質物を含むか否かにより、有機物資材の腐熱に伴う窒素形態変化能の遷移を次のようにまとめた。木質物を含まない場合:もっとも未熟な段階ではアンモニア化成とアンモニア揮散を主とし、次の段階ではアンモニア化成は弱まり、NO_2-Nの集積や硝酸化成、脱窒が起こるが、最終的にはアンモニア化成と硝酸化成が卓越する段階に至る。木質物を含む場合:アンモニア化成とアンモニア揮散を主とするもっとも未熟な段階と一時的なNO_2-Nの集積や硝酸化成、脱窒が起こる段階を経た後、木質物の分解に伴う有機化が卓越するが、最終的にはアンモニア化成と硝酸化成のみの段階へ到達する。

著者関連情報
© 1988 一般社団法人日本土壌肥料学会
前の記事 次の記事
feedback
Top