日本土壌肥料学雑誌
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水稲の作期移動が登熟経過と穂の構成要素別無機成分の動態に及ぼす影響
吉田 徹志山本 由徳吉川 義一
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1988 年 59 巻 4 号 p. 382-388

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抄録

短期栽培用品種フジヒカリを施肥条件を一定にして、作期を変えて栽培した。作期移動が登熟経過と穂の構成要素別無機成分の動態に及ぼす影響について検討し、以下の結果を得た。1)米粒重と登熟期間の気温との関係は、出穂初期が高温であるほど登熟初期の米粒重の増加速度が速く、後期に増加速度が低下した。逆に、登熟初期が低温の場合はより後期まで米粒重が増加した。収穫期の米粒1粒当たり乾物重は6、7月植が4、5月植より優った。2)もみの含水比は、各作期とも出穂後5日から10日頃までは比較的高く、その後20日頃までの登熟盛期に急減したが、その低下速度は登熟の進行が早い作期ほど大であった。これに対して、各作期の枝梗の含水比は登熟がほぼ完了した後、すなわち、もみの含水比の変化が小さくなった後に急減した。3)枝梗のK含有量は、N、P、Mg含有量と異なり、作期の早い4、5月植に比べて作期の遅い6、7月植で高く推移し、登熟初期の米粒乾物重の増加速度との対応がみられた。また、枝梗のK含有量が最高値に達して、低下しはじめる時期と枝梗の含水比の低下する時期が一致しており、Kが枝梗の含水量を高く保ち、もみへの同化産物の通導機能を維持するうえで重要な役割を果たしていることが考えられる。4)もみ殻のN、P、Mg含有量は、各作期とも、枝梗と同様に登熟期間中に漸減の傾向を示した。もみ殻のK含有量の推移パターンは、出穂後の気温の推移と同様であり、作期移動に伴う登熟期間の気温の変化に対応してもみ殻のK含有量が変化したものと推定される。5)作期によって玄米の無機成分の変化がみられ、作期が遅くなるとN含有率が上昇し、P、K含有率は低下する傾向がみられた。

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© 1988 一般社団法人日本土壌肥料学会
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