日本土壌肥料学雑誌
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夏秋ギク「岩の白扇」の葉身汁液による窒素栄養診断のための最適葉位と診断指標
福田 敬松村 司山口 祐輔三好 利臣
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2004 年 75 巻 4 号 p. 487-491

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抄録

キクにおける窒素栄養診断において,伊藤は,葉分析による葉中窒素含有率を用いた窒素栄養診断を検討し,診断に適する葉位としては下位葉ほど好ましいと報告している.本試験では,葉身の全分析による葉中窒素含有率ではなく,葉身汁液を用いた検討であったが,窒素栄養診断における最適葉位は下位葉が適当であり,葉身の全分析による最適診断葉位と同様の結果を得た.営農現場での簡便さや迅速性を考慮した場合,葉色値測定による診断が期待されるが,葉色の低下等外観に窒素不足が現れてからでは生育への影響が懸念されること,また,葉中窒素含有率と葉緑素計の相関が一時期(花芽分化期)に限られることなど補助的指標としては有効であるものの,生育全般の診断においては不十分であると考えられる.したがって,内容成分である窒素を直接測定する方法が適当と考えられ,今回検討した葉身汁旅中の硝酸イオン濃度による窒素診断は,迅速かつ簡便であり,リアルタイム栄養診断として,これまでの葉中窒素含有率による診断と同様な診断技術としての有効性が示唆された.今後は,品種や作期の違いによる診断指標の作成および診断後の施肥対応を含めた検討が必要となる.昨今,花き栽培においては,長引く景気の停滞や外国産の安価な花きの輸入拡大等,厳しい情勢下にあり,今後,国内外にわたる産地間競争が一層激化していくことが予想される.生産段階の基本である高品質安定生産に向けて,環境にやさしい効率的な施肥管理技術を支援するツールとして,本技術が活用されることを期待する.

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© 2004 一般社団法人日本土壌肥料学会
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