日本土壌肥料学雑誌
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北海道の施設栽培土壌における亜酸化窒素の発生実態と抑制対策
林 哲央日笠 裕治坂本 宣崇
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2004 年 75 巻 5 号 p. 575-582

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抄録

北海道の施設栽培において現行の収量レベルを維持しながら亜酸化窒素(N_2O)の発生を抑制するため,まずN_2Oフラックスの実態とその変動要因を明らかにし,さらにN_2O発生とマルチ使用法や堆肥施用法との関係について検討した.1)ホウレソソウのハウス栽培畑で4年間にわたり定点観測を行った結果, N_2O-Nフラックスは平均28μg m^<-2>h^<-1>(最大425,最小-8)であった.また,地温が1〜3℃前後と低い冬期間においても,天井をビニールで被覆した無積雪下の場合には小さなN_2O発生が常に認められた.N_2Oは主に土壌水分と地温の両方が高いときに発生することが明らかとなった。2)地温を高めるべき低温期に透明マルチを使用すると,地温が上昇しても15℃程度であるため,フラックスは低く白マルチと同程度であった.一方,地温を抑制すべき高温期の透明マルチでの被覆は,地温が28℃と著しく高まり,フラックスも裸地の30倍以上大きかった.これに対して,白マルチの場合は地温を上昇させないので,フラックスの発生は低かった.3)3ヵ月間堆積した牛糞稲わら堆肥を施用したときの2ヵ年平均フラックスは,1年間堆積した堆肥より約8倍高い608μg m^<-2> h^<-1>であった.4)堆肥施用と窒素施肥を同時に行うと,窒素施肥後の2ヵ年平均フラックスは216μgm^<-2> h^<-1>で,施肥のみで堆肥無施用よりも約7倍高かった.しかし,窒素施肥の1週間以上前に予め堆肥を施用すると,フラックスは著しく低下した.5)以上の結果から,施設栽培において作型に合わせて合理的にマルチの色を選定すると,N_2O発生量は裸地条件と同程度になり,腐熟の進んだ堆肥を化学肥料窒素施肥よりも1週間以上前に施用すると,N_2O発生量は堆肥無施用で化学肥料窒素のみ施肥した条件と同程度になることが明らかとなった.従って,これらの適正な栽培管理法は,N_2O発生の抑制に貢献していると考えられる.

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© 2004 一般社団法人日本土壌肥料学会
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