抄録
草地の長期利用による土壌への影響を明らかにするために,肥料三要素と堆肥連用試験草地での34年間における地表下30cmの土壌の化学性の変化と養分蓄積量について検討を行った.(1)pH(H_2O)は堆肥無施用区のN区とNK区の表層で低く,その他の施肥処理区および堆肥施用区では全層において造成前より高く維持されていた.(2)全窒素は全ての処理区において0〜5cmで高かった.NPK区および堆肥施用区の全ての施肥処理区の全窒素は0〜5cmで造成前より高く,5cm以深では全ての処理区で造成前を下回った.(3)可給態リンは堆肥無施用区および堆肥施用区のリン施用区の0〜5cmで著しく高かった.堆肥施用区のリン施用区では,0〜5cmから5〜10cmへのリン移動の可能性が示唆された.(4)交換性カリウムは堆肥無施用区のカリウム施用区および堆肥施用区の全施肥処理区において,深さ30cmまでの全層で高く,造成前の含量を大きく上回っていた(5)深さ30cmまでの可給態リンおよび交換性カリウムのそれぞれの単位面積当たりの合計量は,年間の施肥量との比較から,可給態リンはリン施用において,また交換性カリウム量はカリウム施用や堆肥施用の条件下において,極めて高い蓄積量となる場合があることが示された.したがって,草地の長期利用において,土壌診断に基づく施肥改善の重要性が示された.