2018 年 89 巻 1 号 p. 7-18
窒素連用試験の継続年数が2017年現在で44年になるリンゴ‘紅玉’の長期窒素連用試験ほ場(土壌種:褐色森林土)において,無窒素区(0 kg N 10 a−1)と窒素連用区(20 kg N 10 a−1,硝安)におけるリンゴ樹の収量,果実品質,無機成分含量(1974~1993年),および土壌の化学性(1975~1994年)の既存のデータ(農林水産技術会議事務局・福島県果樹試験場,1997)と,著者らが得た2014年以降のデータを併せて窒素連用の長期的影響を評価した.さらに,窒素連用試験の開始から41年後(2014年)の土壌中の窒素含量を形態別に評価して,長期の窒素肥料の連用による土壌窒素の存在形態の変化を明らかにすることを目的とした.得られた結果は以下のとおりである.
1)長期の窒素肥料の連用によって,果汁の酸度は低下したが,果肉と中位葉の窒素含量は増加する傾向を示した.リンゴ樹の収量,果数,果重,果肉硬度,果汁の糖度は,試験区の違いというよりも年次間の違いが大きかった.
2)長期の窒素肥料の連用は,表層土壌(0~20 cm)のpHの低下を招いた.この表層土壌の酸性化は,交換性のCa, Mg, K含量を有意に減少させ,交換性Al含量を有意に増加させた.
3)リンゴ樹の新梢中位葉のCa含量は,窒素施用の有無に関わらず,1975年,1976年および1984年の平均値と比べて,2016年では顕著な低下が見られた.この低下は,土壌の交換性Ca含量の経年的な低下と対応した.
4)土壌の全N含量,および全C含量は,無窒素区と窒素連用区の表層土壌(0~5 cm)で経年的に増加した.その程度は窒素連用区でより顕著だった.
5)窒素連用試験の開始から41年後の土壌中の窒素含量を形態別に評価した結果,NO3−と固定態NH4+の含量は有意な違いは見られず,交換態NH4+含量も70~90 cm層の土壌を除いて有意な違いは見られなかった.有機態N含量は,0~5 cm層,および70~90 cm層において窒素連用区が有意に高かった.無窒素区と窒素連用区ともに土壌の深さに関わらず80%以上の窒素が有機態として存在した.
6)本試験ほ場に施用された窒素の大部分は土壌に保持されずに溶脱したことが示唆された.また,土壌のNO3−の溶脱とともに,対イオンとしてCa2+が溶脱したことが示唆された.しかし,施用された窒素肥料の一部は,下草に吸収されて,それらが枯死分解後に土壌の最表層(0~5 cm)に有機物として蓄積していることも示唆された.石灰施用量が小さい施肥管理を継続した本試験ほ場の場合には,土壌の交換性塩基組成の不均衡が経年的に増幅して,それに伴い,リンゴ樹の新梢中位葉のCa含量が低下し,樹体の元素含量に影響を及ぼすことが示唆された.