原位置において簡便に土壌のガス拡散係数を測定できる装置を考案した.本装置の基本原理はMcIntyre and Philip(1964)と同様であり,上端が密閉された円筒を土壌に打ち込み,上部のトレーサーガスの濃度の減衰からガス拡散係数を求める.本装置では定量手法として半導体式ガスセンサーを,トレーサーガスとしてのイソブタン(2-メチルプロパン)を用いる.これにより,ガスクロマトグラフィを使わずに少量の添加ガスの濃度変化からガス拡散係数が求められる.豊浦標準砂を使った検証では一般的に用いられる遅沢・久保田法と同値を得ることができた.半導体式ガスセンサーの出力値を安定させるためには測定前に通電期間が必要であり,センサーは土壌空気中の水蒸気に反応するため,測定前に装置内の湿度を平衡させる必要があった.これらの処理を行うことで,イソブタンガス濃度はセンサーの出力値から指数関数により定量できた.また,イソブタンガスは風乾した豊浦標準砂に吸着することから,強く乾燥した土壌への適用は難しいと考えられた.