日本土壌肥料学雑誌
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メタン発酵消化液の秋冬ダイコンへの施用ならびに化学肥料の代替可能性
石川 葉子
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2021 年 92 巻 3 号 p. 238-248

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抄録

わが国において,メタン発酵消化液(消化液)を化学肥料の代替肥料として施用する試みがイネや様々な野菜を対象に行われ,化学肥料区と比較して遜色ない収量が得られることが報告されてきた.しかしながら,消化液による化学肥料の代替が収穫物の成分や養分含有量へ及ぼす影響の検証例や消化液の肥効率を推定する試みは限られている.本研究では,秋冬ダイコンを対象に,化学肥料を施用した施肥体系(化学肥料グループ),化学肥料慣行区の窒素成分換算で50%以上を消化液により代替した施肥体系3水準(消化液グループ)を含む圃場試験を2年間実施し,消化液による化学肥料の代替がダイコンの収量と品質に及ぼす影響を対比のある分散分析法により明らかにするとともに,化学肥料慣行区との比較により消化液の肥効率を推定した.本研究で用いた消化液のリン酸濃度は低かったが,化学肥料によるリン酸の補正施用を行わなかったため,消化液グループは化学肥料グループと比較して低リン条件での栽培となった.規格内収量は1年目には消化液グループが化学肥料グループよりも有意に低かった.消化液グループにおける窒素の肥効率は2年間のデータから50%程度と推定された.また,収穫後の土壌無機態窒素濃度は化学肥料,消化液にかかわらず全量を基肥施用した区が低く,施用上の利便性に優れる消化液の全量基肥施用が,収穫後の窒素溶脱の視点からも有効な選択肢と考えられた.

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© 2021 一般社団法人日本土壌肥料学会
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