日本土壌肥料学雑誌
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飛騨地域の水稲「コシヒカリ」における湿潤土湛水培養による窒素無機化量を考慮した適正な施肥窒素量の算出方法
和田 巽 可児 友哉棚橋 寿彦
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2024 年 95 巻 6 号 p. 376-383

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抄録

岐阜県飛騨地域の水稲主要品種「コシヒカリ」の良好な品質や食味と安定生産の両立に向けて,湿潤土湛水培養による窒素無機化量を加味した適正な施肥窒素量の算出方法を構築した.適正な施肥窒素量を算出するための指標には窒素吸収量を用い,玄米収量および玄米タンパク質含量との関係から,飛騨地域の「コシヒカリ」の成熟期における理想的な窒素吸収量を80~85 kg ha−1と設定した.水田作土からの窒素供給量(作土N)の指標には湿潤土30°C10週間湛水培養による窒素無機化量(湿10 w)を用いた.これにより求めた作土Nを基肥による施肥窒素量(基肥N)に加えた窒素供給量と幼穂形成期(幼形期)における窒素吸収量との間には一定の関係性が見られ,幼形期の窒素吸収量に応じて適正な窒素供給量が推定可能であった.さらに重回帰分析により合理的な推定式を作成し,幼形期における窒素吸収量と湿10 wに応じた適正な基肥Nの推定式を構築した.一方,幼形期以降の窒素吸収量は穂肥による施肥窒素量(穂肥N)の影響が強く,穂肥Nと幼形期以降の窒素吸収量との関係を基に,幼形期以降に必要な窒素吸収量から適正な穂肥Nを推定する手法を構築した.過剰な窒素施肥による倒伏の危険性を考慮し,窒素吸収量は幼形期までに50 kg ha−1,幼形期以降に30~35 kg ha−1とすることが適当と考えられた.

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© 2024 一般社団法人日本土壌肥料学会
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