日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
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耕起後圃場の表面画像の土塊程度からの砕土率推定—深層学習による画像分類の活用—
今野 智寛 畑中 篤滝澤 浩幸
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2024 年 95 巻 6 号 p. 367-375

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抄録

砕土率の確保は,畑作物における出芽・苗立ちの安定化や土壌処理型除草剤の効果を高めるために重要な栽培管理である.砕土率の目安は70%以上とされているが,その測定には労力と時間を要するため現場で砕土率の診断をすることは難しい.そのため,簡易な診断方法の開発が求められており,本研究では画像中の土塊数及び土塊サイズから砕土率を推定する方法を検討した.画像中の長辺が5 cm以上10 cm未満の土塊数と10 cm以上の土塊数から算出した表面土塊程度と砕土率の関係を解析した結果,決定係数R2が0.83(p<0.001)の直線回帰式が得られ,RMSE=2.98%の精度で表面土塊程度から砕土率を推定できる可能性が示された.さらに,表面土塊程度を推定するための画像分類モデルを深層学習のアルゴリズムの1つである畳み込みニューラルネットワークを用いて構築した.構築した画像分類モデルは表面土塊程度が低く砕土率が高い画像ほど分類の正解率が高かった.また,画像分類における注目箇所をGrad-CAM手法で可視化したところ,土塊そのものではなく土塊の周辺部に注目して分類していることが明らかになった.以上より,本研究の画像分類モデルを活用することで,砕土率の目安である70%を満たしているかどうかを画像から簡易に診断できる可能性が示された.

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© 2024 一般社団法人日本土壌肥料学会
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