抄録
本稿では海軍技師・建築家の吉野直吉の足跡を追った。その概要は下記の通りである。
1. 吉野直吉は明治2年(1869)に生まれ、大工としての修業を経て明治33年(1900)から大正7年(1918)にかけて海軍の技術者として活躍した。
2. 1920年代から1940年代にかけて東京や川崎で堂宮建築の設計を行っている。主な作品に氷川神社社殿、玉川神社社殿、千束八幡神社などがある。
3. 竹中大工道具館では吉野直吉の突鑿、短刀、儀式装束一式、縮尺竹尺を所蔵している。このうち短刀は明治3年(1870)11月に七代目石堂是一が作ったものである。また儀式装束は昭和13年(1938)の玉川神社拝殿立柱式で使用されていることが古写真により判明した。