竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
木材切断技能における切り始めの視線に着目した巧緻性の解明
橋爪 一治
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研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2020 年 31 巻 p. 39-52

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抄録

現在、宮大工などの後継者や従事者不足が深刻である。しかも、高度技能者の養成には時間がかかる。そこで、われわれは、短期間に巧緻な木材加工技能を確実に身につける指導法の開発を目指し、熟練者は「どこを見て、いつ、どこに、どれだけの力を入れて道具を操るのか」の解明に取り組んできた。この一環として、のこぎりで木材を切断する場合重要となる「熟練者は、その切り始めは、どこを見ているのか」という視線位置を、アイカメラを使って調査し、未熟練者と比較することで明らかにした。その結果、熟練者は、切り始めにおいて、①切断線を忠実に捉えた視線の移動を行っており、数秒後にどこを切断していなければならないかという確認と、今の切断状況の確認やその微調整を同時進行で行っていること、②平面のけがき線ばかりでなく、奥側のこば面に引かれたけがき線の2面のけがき線を同時に見ながら切断していることなどが明らかとなった。

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