抄録
深層水に含まれる窒素・リン等栄養塩を利用したバイオレメディエーションの基礎実験として, 深層水, 表層水及びそれらの1: 1混合海水における1, 10及び100mgl-1のフェノール分解性の比較検討を行った.その結果, 上記の各種海水におけるフェノールの分解速度は, おおむね1: 1混合海水>深層水>表層水であった.1: 1混合海水では, 10mgl-1のフェノールは, 1日間の分解試験で, 90%以上分解された.細菌数は, 混合海水では初期値が104CFU ml-1のオーダーであったが, 2日間で106CFU ml-1程度まで上昇した.表層水は微生物数が多いが栄養塩類に乏しく, 深層水は栄養塩類が豊富であるが微生物数は少ない.1: 1混合海水では, 微生物及び栄養塩類を相互に供給する結果となり, 化学物質を分解する上で適切な系が形成されたと推測される.本結果から, 深層水の新たな利用方法として, 深層水を利用したバイオレメディエーションの可能性が示唆された.