日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-1
会議情報

損傷・修復(回復・DNA損傷・修復関連遺伝子[酵素]・遺伝病)
Non Homologous End-Joiningの正確性におけるATMの役割に関する研究
*川田 哲也神應 百重劉 翠華斉藤 正好川上 浩幸茂松 直之久保 敦司伊東 久夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
背景および目的
放射線に対し著しい感受性を示す疾患の一つとしてAT(Ataxia telangiectasia)が知られているが、高感受性のメカニズムは不明である。高感受性メカニズムとして、cell cycle checkpoint control lossが一般的に受け入れられている。本研究では、cell cycle の影響を除外する目的で、静止期のA-Tおよび正常線維芽細胞にガンマ線を照射後、37℃で24時間、修復させた後に細胞生存率とFISH法を用いた染色体異常解析からATの感受性メカニズムの解明を目的とする。G0期、G1期の修復はNHEJによって行われることから、PLDRの観点からもNHEJにおけるATMの役割を検討した。
材料・方法
(1) 材料:ヒト由来の正常線維芽細胞であるAG1522,ヒトAT homozygote 由来のGM02052を用いた。(2) 約2Gy/minの線量率でガンマ線照射を行い、照射後に24時間インキュベーターにて修復時間を与えた。(3) 感受性の解析:コロニー形成能より生存率を算出することにより感受性を決定した。(4) 染色体異常解析:1番および3番の染色体プローブを用いてdeletion, color-junction頻度を測定した。
結果および考察
A-T細胞は正常細胞と比較して著しい染色体異常(後修復および欠失)が見られた。静止期細胞における修復はNHEJで行われると考えられ、AT細胞ではNHEJの正確性が著しく阻害されていることが示された。細胞生存と染色体異常は相関関係が見られ、後修復および欠失はATの放射線高感受性の原因と考えられた。PLDRの検討からは、正常細胞ではdelayed platingではimmediate platingにくらべ異常が約半分に減少し、AT細胞ではいずれにおいても著しい異常が認められた。NHEJの正確性は正常細胞においては細胞周期に依存するが、ATでは依存しないことが示唆された。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top