抄録
著者らは, 先に, 駿河湾深層水 (水深397mから取水, 以下, 深層水) がサガラメとカジメの種苗生産に有効であることを明らかにし, 水温と光の影響についても報告した.本研究では, 深層水または表層海水 (水深24mから取水) を掛け流した透明パイプ内でサガラメとカジメの幼体を培養し, 0.5-9.4cm・sec-1の4段階の流速条件で生長を比較した.サガラメは約14℃ で24日間, カジメは約18℃ で16日間, いずれも自然光下で培養を行った.深層水中では, 2種の葉長の相対生長率は調べた範囲 (ただしサガラメでは9.4cm sec-1が欠測) の流速に対してほぼ一定で, サガラメで4.9-5.2% day-1, カジメで9.1-9.7% day-1となった.しかし, 表層海水中では, 流速の増加に伴い増加し [サガラメ: y=0.40Ln (x) +4.47 (r2=0.99);カジメ: y=0.84Ln (x) +7.99 (r2=0.99)], 最大でそれぞれ5.4, 9.7% day-1となった.以上, サガラメやカジメは深層水を用いれば, 流速の多少に関わらず培養できることが示唆された.