抄録
北海道知床らうす簡易取水施設 (羅臼町) で, 深層水 (取水深度218m) をかけ流している屋内実験水槽内に出現した付着珪藻類を2004年12月から1年間調べ, 光学および走査型電子顕微鏡で観察し, 7属11種の出現を確かめた.主要種は, Achnanthes sp., Amphora sp., Cocconeis pinnata, Cocconeis sp.1, Naicula sp.1, Nitzschia tabicolaおよびTryblionella sibulaで, このうち.Amphora sp., Cocconeis sp.1, Navicula sp.1およびNitzschia tubicolaは高頻度で出現した.これらの種類は他の深層水施設の報告に記録がなく, 本深層水に特徴的に出現した可能性が高い.本研究の結果は, 深層水に対する珪藻の生物指標的アプローチの可能性を示唆しており, 今後各地の深層水施設に出現する珪藻の種組成とその動態を調査することにより, 海洋深層水の新たな特性の発見が期待されると結論した.