抄録
エゾパフンウニの生殖巣をウニ折りに加工する際には, 身崩れ防止や保存のためにミョウバンの人工海水 (食塩水) 溶液が用いられるが, ミョウバンの使用量が多いと特有の苦みを呈する.そこで, 羅臼町沖 (1.4km沖, 水深218m) 海洋深層水を用いたミョウバン溶液 (0.2%, 0.5%および1.0%) と従来法の人工海水を用いたミョウバン溶液 (1.0%, 対照区) で生殖巣を処理し, 細菌検査と官能検査の結果を比較した.各生殖巣は10分間の浸漬後120gずつ折詰して冷蔵し (5℃), 1, 5, 10および15日目に分析した.各区とも一般生菌数は10日目まで10, 000個/g未満 (最大は15日目の23, 000個/g), 大腸菌群は陰性で, 食品衛生法上の生食用鮮魚介類の基準 (一般生菌数100, 000個/g以下, 大腸菌群陰性) を満たした.官能検査では, 食味, 外見, 総合評価のいずれも深層水試験区が対照区よりも高い値を示し, ミョウバンの濃度が低いほど評価が高かった.