抄録
温度調節環境を用いて, 植物生育に対する温度効果を精密に解析する場合, 非制御要因が温度効果にいかなる影響をおよぼすかを解明しておく必要がある.本報では各空気温度条件下で地温を制御し.キュウリ胚軸伸長に対する地温の影響を解析した.地温の制御には, water bath方式を用い, 15, 20, 25, 30, 35℃の各空気温度条件下で, 地温を空気温度より5℃高い条件, 5℃低い条件, および空気温度と同じ条件に設定した.
15, 20, 25℃の各空気温度では, 地温が高い条件下において胚軸伸長は大で, 地温が低い条件下において小であった.一方, 空気温度35℃では, 地温が低い条件下において胚軸伸長は大で, 地温が高い条件下において小であった.空気温度30℃では, 各地温条件下における胚軸伸長に5%レベルでの有意差がなかった.
空気温度を25℃に制御したファイトトロンガラス室においては, 地温 (表面下1cm) は太陽放射によって著しく上昇し, 特に幼植物の場合, 最高温度が33.8℃となった.このようなファイトトロンガラス室において空気温度と同じ温度に地温を制御した条件下と, 制御しない条件下において胚軸伸長を測定した.空気温度20℃, および25℃のいずれにおいても地温を制御しない条件下における胚軸伸長は, 地温を制御した条件下における胚軸伸長よりも大であった.
以上の結果から, 地温は胚軸伸長に著しい影響を与えることが明らかとなった.このことは, 植物生育に対する温度効果解析にあたっては, 空気温度だけの制御には満足できない場面があり, 地温の制御を考慮すべきであることを示唆している.とくにファイトトロンガラス室においては, 晴天時の太陽放射は地温を著しく上昇させ, しかもその変動が大きい.このような環境条件は植物生育に対する温度効果に著しく複雑な影響を与えるものと考えられ, 空気温度と同様に地温の制御が必要であろう.