抄録
植物反応と環境要因との関係解析を行なうにあたって, 人工照明室は光条件が制御できるという点から有効な場面が多い.しかし, 人工照明方法には多くの問題が残されており, 十分な方法論の確立がなされていない.本報では人工照明方法の進展に資するために, ホウレンソウの生育反応を指標とした光源の特性解析を行なった.
材料として用いたホウレンソウ「禹城」は, その抽苔が日長条件に支配され, 13時間日長, 気温20℃の自然条件下で完全に抽苔する品種である.環境条件設定にはグロースキャビネットを用いた (温度20℃±2, 相対湿度80~90%, 照明時間13時間) , 人工光源としては白熱ランプ (100V-500W) , 長波長 (750nm以上) をカットした白熱ランプ, 昼光色螢光ランプ (FLR-80H-D/M) , バラストレス水銀ランプ (BHRF700) を用いた.光強度設定基準としては照度と放射エネルギー量の単位を用いて, それぞれ10, 0001uxおよび2.5mW/cm2の2つの異った光強度条件を設定した.これらの環境条件下で, モミガラクンタン水耕法でホウレンソウを栽培し, 栄養生長および生殖生長に与える各種人工光の特性を解析した.
10, 0001ux区では, 各光処理区における草丈, 生体重の増加および花芽形成には差異が認められなかったが, 子葉節位と生長点間の長さには明瞭な差異が認められた.すなわちバラストレス水銀ランプ, 螢光ランプおよび長波長をカットした白熱ランプの各区では子葉節位と生長点間の伸長が促進されたが, 白熱ランプ区では抑制された.
2.5mW/cm2区における草丈, 生体重の増加は螢光ランプ区では促進されたが, バラストレス水銀ランプ区では逆に著しく抑制された.各光処理区間における花芽形成の差異は認められなかった.螢光ランプおよび長波長をカットした白熱ランプの2区における子葉節位と生長点間の伸長は, バラストレス水銀ランプの区に比べて, より促進された.
このように各種光源下の光強度基準を照度 (lux) または放射エネルギー量 (mW/cm2) を単位として一定に設定した場合においても, 植物の生育反応は人工光源のちがいにより著しく異った.またそれら生育反応に対する人工光の影響には, 光強度の設定基準によって著しく差異があった.とくにホウレンソウの子葉節位と生長点間の伸長は長波長域の光強度に影響される傾向が認められ, このことは人工照明において長波長域の光強度に十分な考慮を必要とすべきことを示唆している.
これらの結果から, 人工照明を用いた制御環境下で植物反応を解析する場合には, ランプの選択とその組合せが著しく重要であり, また一般に用いられている光強度設定基準には必ずしも満足できない場面があり, 植物反応解析に適応した測定方法の確立が必要と考えられる.