生物環境調節
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球根アイリスの休眠および発芽に及ぼす貯蔵温度の影響
塚本 洋太郎安藤 敏夫
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1973 年 11 巻 2 号 p. 69-78

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抄録

1) 球根アイリスの品種・ウェッジウードの球根を, 収穫直後から4カ月13, 8, 2℃に貯蔵し, 9月下旬農場に定植したものは休眠して発芽しなかったが, 17℃および30℃においたものは正常に生育した.
2) 6月下旬から20℃に貯蔵した球根では8月上旬以後球根内の第1葉が著しい伸長を示すが, 10℃に貯蔵したものは休眠したままになり, 母球内に新球を形成するに至る.これはフリージアに見られる二階球形成の現象とまったく同じである.
3) 収穫後の球根を20, 25, 30, 35℃に1, 2および3週間おいて発芽をみると, 温度が高いほど, また貯蔵期間が長いほど早く, かつ高い発芽率を示した.
4) 収穫後の球根を20℃および30℃に貯蔵した場合, 6週間までの貯蔵ならば30℃の方が20℃よりも少しよい発芽率を示すが, もし貯蔵期間が8週間以上に伸びると20℃の方がよくなる.
5) 以上のように発芽, 発根にはある積算温度が必要であるが, 開花させるにはさらに大きな積算温度が必要になる.なお, 開花を早めるには夏期に冷蔵を必要とするから, 8℃49日冷蔵する前, 6月9日から20℃において調べてみると, 冷蔵開始前40日間20℃におかなければ高い開花率にはならなかった.
6) 生長調節物質 (ベンジルアデニン, ジベレリン, エセフォン) 処理を行なって休眠を破れるかどうかを調べた.高温処理と併用すれば, これらの調節物質の生長促進効果は認められるが, 高温処理をしなければ生長調節物質単独の効果は認められなかった.なお, エセフォンだけは高温処理後でなければ処理効果はなかったが, 他の2つは高温処理の前後どちらで与えても効果があった.
球根アイリスの休眠を支配する抑制物質としてはアブシジン酸および中性分画に見られる脂肪酸を分離, 同定したが, それらの消長については他に発表する.

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