抄録
光に対する植物の反応を詳細に解析するためには光の質と量について, より高精度で計測し制御することが望まれる.本研究では, グロースキャビネットにおける分光放射照度と放射照度の計測と制御方法を改善することを目標として, 装置の開発とその性能解析を行った.
光の計測放射照度の計測にはラジオメーターを用いた.光検出器としては真空熱電対を用い, その前面に赤外カットフィルターを設置して, およそ300~800nmの波長域における放射照度を計測することにした.分光放射照度計測には, 新たに試作したスペクトロラジオメーターを用いた.この装置は, 積分球 (受光部) , 回析格子モノクロメーター, 光電子倍増管から構成されていて, 波長範囲300~800nm, 分光放射照度0.5~500μW/cm2・nmの光を高精度, 高分解能 (半値幅2.6nm) で計測可能にした.また, コサイン則も, 十分に満足した.装置の校正にはNBS規格の分光放射照度標準ランプ (1, 000Wよう素電球) を用いた.
光制御装置植物に対する有効波長域を考慮して350nm~800nmにおける放射照度と分光放射照度の制御を目的にした.光源として, 分光放射分布の異なる6種のランプを選んだ.すなわちカラード螢光ランプ5種 (ブルー, ブルーホワイト, イエロー, ピンクを各10個, レッド5個) およびレッドビームランプ10個である.これらのランプの光束の効率と安定性を高めるためにランプコンパートメントには温度制御装置を装備した.各ランプの光束をSCR調光装置によって設定する方法を採った.螢光ランプを調光した場合, その分光放射分布のシフトは, ほとんど認められなかった.
この装置において, 各ランプの光束を設定することにより, グロースコンパートメント内の放射照度と分光放射照度を制御することが可能となった.制御範囲は350nm~800nm, ランプ定格の0~100%である.