抄録
1) クロショウジョウバエについて走光性と避光性の2方向に迷路器具によって40代にわたって選択した.その結果, 両方向の選択に対する反応は対称的ではなかった.走光性, 避光性の実質遺伝率を初めの20代について求めたところ, いずれも極めて低い値であった.
2) 走光性, 避光性両集団に対して, 選択34代から逆選択と分断選択を始めたが, 逆選択の結果は両集団の走光性は速やかに中立性に復帰し, 分断選択の結果は中立性よりもやや避光性に偏した.それらの結果から避光性をあらわすポリジーンが, 走光性をあらわすポリジーンに対して部分優性を示すか, あるいは両方のポリジーンの数に差があるのではないかと考えられた.
3) 走光性, 避光性両集団および無選択集団のハエの体重, 体長, 翅長のような形態的形質と, 産卵, 光に対する歩行反応などの生理的行動的形質を比較した.その結果, 走光性のハエは体が小さいが, 光に対する歩行反応は速やかであり, 毎日の産卵数は著しく少なく, 光環境の変化に対する反応は鈍感であった.総合的に走光性のハエの寿命は短いと考えられた.一方, 避光性のハエは無選択のハエに上記の形質については近いことが認められた.このような走光性の方向性選択の結果, それに伴っておこった種々な形質の変化 (悪い影響) はポリジーン系間の連鎖か, あるいはあるポリジーンの多面発現作用によるものであろう.