生物環境調節
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画像処理による植物生育の電算機制御
III.実用栽培における植物生育評価のための画像処理
江口 弘美松井 健
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1978 年 16 巻 2 号 p. 47-55

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抄録
植物生育の電算機制御に必要な生育情報を得る方法として, テレビカメラを用いた植物のオンライン画像処理が有効であることを前報で明らかにした.本報では, ガラス室などにおける実用栽培条件下でのキュウリ植物個体群の生育評価のための画像処理方法の確立を試みた.
1) 1個体の植物像は葉序などの要因で撮影角度 (方向) によって変動する.そこで同一画像に写される植物の個体数と, 撮影角度の変化による2値化像マトリックス要素の和 (P) の変動との関係を解析した結果, 9個体以上の植物を同一画像に写し込めばPの変異係数が0.05以下となることがわかった.すなわち, 9個体以上の植物で同一画像を構成すれば, 撮影角度による画像変動はほぼ無視できる程度となり, 固定したカメラ角度 (位置) での画像処理が可能であることが明らかとなった.
2) 実用栽培場面において植物群の画像を撮った場合, 背景がノイズとなり, 植物像の画像処理が困難となる.植物像を背景から分離する手法をさがすために, 背景と植物のそれぞれの反射スペクトラムを調べた結果, 750nm以上の光波長域で背景と植物の反射度に大きな差があることがわかった.そこで, 約1100nmまでの感度特性をもつカメラセンサー (シリコンビジコン) と850nm以下をカットする赤外透過フィルターを用いて植物を撮影し, その2値化像を得ることにより, 背景を消去し植物像のみを抽出することを可能にした.
以上の画像処理方法により実用栽培におけるキュウリ植物群の生育評価モデルを作ることができた.この画像処理方法による生育評価は実用場面における植物生育の電算機制御に応用されうることが明らかとなった.
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© 日本生物環境工学会
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