抄録
植物生体内水欠差が植物生理作用におよぼす影響について実験を行い, つぎのような結果を得た. (1) 体内水分状態は茎径変化を測定することにより求めた.茎径測定は従来の方法と異なり, センサとして渦電流素子を使用し, 植物体に非接触で測定できる装置を開発した. (2) 栽培環境条件の変化により茎径・葉温変化に振動現象が生じた.茎径変化は葉温変化に比べ約7分間の時間おくれがみられた. (3) 植物体に水ストレスを与えた場合, 水ストレス解除後も長時間にわたり蒸散速度は低下し, 水ストレスの後遺症が生じた.後遺症の程度は体内水欠差の大きさにより異なり, ストレスが大きいほど長期間にわたり持続した. (4) 葉中の水欠乏の増大につれ, 葉中でのABA濃度は指数関数的に増大した.水ストレス解除後のABA濃度は時間とともに指数関数的に減少するが, その減少速度は非常に小さかった.以上の結果から水ストレスによる蒸散速度の低下およびその回復のおくれという後遺症の原因として, 植物ホルモンの一種であるアブシジン酸 (ABA) の生成が関与していることが示唆された.