生物環境調節
Online ISSN : 2185-1018
Print ISSN : 0582-4087
ISSN-L : 0582-4087
蒸散モデルに基づく植物用人工光の評価
松井 健江口 弘美副島 泰彦
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 19 巻 1 号 p. 25-34

詳細
抄録
植物に対する光の作用と環境条件とをパラメータとした蒸散速度の数式モデルを作り, 人工光評価の
基礎的な方法を得た.
気孔運動に対する単色光の作用は赤色光域に比べ青色光域において大で, 緑色光域において小であった.この気孔運動の光波長依存性に対応して光波長域をB (400-500nm) , G (500-600nm) およびR (600-700nm) に区分し, それぞれの光波長域に十分な放射束をもつ青色, 緑色および赤色螢光灯を光源として用い, 種々の空気条件下でキュウリ植物の蒸散速度に対する光の作用を調べた.その結果, 蒸散速度の光波長依存性には気孔運動におけるパターンとほぼ同じ傾向が認められた.また蒸散速度 (E, mg・dm-2・min-1) は暗黒における蒸散速度 (E1) と光に作用される蒸散速度 (E2) とにより, .E=E1+E2で表わされた.E1は温度 (T, ℃) と湿度 (H, %RH) の関数としてE=f1 (T, H) で, E2は光条件と蒸散速度に対する光の作用とを評価するパラメータから構成されるLを用いてE2=L・f2 (T, H) で与えられた.ここで光条件の評価には400-700nmの光波長域における全光強度 (Q, nE・cm-2・sec-1) およびB, G, Rにおける光強度の相対値, IB, IG, IR (IB+IG+IR=1) を用い, さらに蒸散速度に対する光の作用を評価するために蒸散速度の光波長依存性を評価するパラメータとしてKB, KG, KR (KB+KG+KR=1) を用いて, L=Q・ (KB・IB+Ka・IGKR・IR) とした.各環境条件におけるE2の測定値をE2=Q・ (KB・IB+KG・IG+KR・IR) ・f2 (T, H) に与え, KB=0.491, KG=0.234およびKR=0.275を得た.これらの定数を用いてf2 (T, H) =E2/Lを決定することにより, 蒸散速度の数式モデルとしてE=f1 (T, H) +Q・ (KB・IB+KG・IG+KR・IR) ・f2 (T, H) を得た.白色螢灯と白熱灯を用いた場合, このモデルによる計算値は測定値と近い値となった.このことからモデルに用いた光条件の評価パラメータが植物用人工光の評価に有効であることが明らかとなった.
著者関連情報
© 日本生物環境工学会
前の記事
feedback
Top