抄録
人工飼料を用い無菌条件下で飼育した各発育段階の幼虫にCdとともにEDTAを10日間投与して, その直後の幼虫の発育経過および死亡率について調べ, EDTAにCdによる毒性を軽減する働きがあるか否かを検討した.
1.孵化直後の幼虫 (蟻蚕) , 3齢の脱皮直後の幼虫 (起蚕) および5齢起蚕から10日間, 200PPmのCd単独またはそれに0.01~0.1Mの種々の濃度のEDTAを混合投与した場合, Cd単独の場合には各発育段階の幼虫ともすべて死亡したが, 0.01~0.1Mの種々の濃度のEDTAを混合投与した場合にはCd単独より発育がよく死亡率も40%以下にとどまり, EDTAにCdの毒性を軽減する効果のあることを認めた.とくに, 0.04MのEDTAを混合投与した場合に各発育段階とも幼虫の発育が最も良好で, 死亡蚕はほとんど認められなかった.しかしEDTA濃度が0.04Mよりも高低いずれかに偏するに従って幼虫の発育は悪く, 死亡率も高くなった.
2.ZnにもCdによる毒性を軽減する働きがあるので, 0.04MのEDTAまたは250ppmのZnを種々の濃度のCdと混合投与して, Cdの毒1生に対する両者の軽減効果を比較した.その結果Znとの混合投与では, Cdの濃度が300ppm以上では, どの発育段階の幼虫もすべて死亡したが, EDTAとの混合投与では, Cdの濃度が2, 500ppm以上でないとすべての幼虫が死亡することはないことがわかった.なおCd-EDTAの投与によって死亡する幼虫は無菌環境であるためすべて中毒死であり, ウイルス病を含む伝染性蚕病の発生はみられなかった.