生物環境調節
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果菜類の花弁・葉に与える乾燥条件がBotrytis cinerea分生胞子の形成に及ぼす影響
山川 哲弘
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1984 年 22 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

果菜類灰色かび病において, 花弁と葉を枯凋させる乾燥条件が分生胞子の形成に及ぼす影響を検討した.本菌分生胞子の形成は, ナスとキュウリの花弁と葉を凍結乾燥または通風乾燥した場合に増加した.しかし, 室内で花弁を3日間乾燥すると, 分生胞子の形成数は通風乾燥の場合より少なく, 葉では無乾燥 (対照) の場合より少なかった.花弁での分生胞子の形成数を葉の場合とくらべると, 乾燥による増加数は少なかった.ナスの花弁と葉を通風乾燥して, それらの糖類とアミノ酸を分析した結果, それらは無乾燥に比べて質・量的に差を認めなかったが, 3日間室内乾燥すると糖類は減少し, アミノ酸は種類によって定性および定量的に変化した.この乾燥で量的に減少したアラニン, アスパラギン酸およびメチオニンをグルコースを含む培地に加え, 灰色かび病菌を培養すると, 減少しなかったバリン, ロイシン, セリン, グリシンおよびトレオニンを加えたものにくらべ分生胞子の形成数は促進された.また, これらアミノ酸の0.5%加用培地では0.1%の場合にくらべて分生胞子の形成は促進された.
以上の結果から, 花弁と葉の枯凋に伴う水分の減少によってアミノ酸が濃縮され, グルコースとの共存によって分生胞子の形成数が増加することが示唆された.しかし, 枯凋に要する期間を3日間にすると胞子形成に有利なアミノ酸が代謝によって減少するため, 分生胞子の形成数の低下が推定された.

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© 日本生物環境工学会
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