抄録
培養液濃度および通気条件が水耕トマト苗の乾物生産および分配に及ぼす影響を調査し, 水耕トマトの栄養生長コントロールのための要因を究明する目的で実験を行った.
培養液濃度の影響は, 4倍濃度区までは, 培養液濃度が高まるにつれて乾物生産が増加したが, 最も高濃度の8倍区では高浸透圧の影響で生長が著しく減少した.各器官への乾物分配率は培養液濃度が薄いほど茎で低く, 根で高くなるため, S/R比は低く, L/S比は高い苗となった.植物体内の窒素含有率は, 各器官とも処理濃度による差がみられ, 4倍濃度までは, 葉中窒素含有率はCGRおよびLAIと高い相関関係を示した.
通気時間によってトマト苗の生長は著しい差がみられたが, 乾物分配率において, 夜間通気区と無通気区で茎への分配率が高くなり, 根への分配率が低くなって, S/R比は高くなった.葉中N含有率は通気処理によって各器官とも影響されなかった.以上から, 培養液濃度処理では1/4および8倍濃度で, 通気時間処理では無通気および夜間通気で栄養生長は著しく抑制されたが, 8倍, 無通気および夜間通気では根に直接ストレスが与えられ, 生長回復の遅延が生じるのでS/R比が低い低濃度の培養液による栄養生長コントロールが望ましいと考えられる.