林床に生育する高木種の稚樹の光合成光強度特性が比較されている.樹種間差は, 最大光合成速度 (Pmax) では明らかではなく, 光曲線の初期勾配 (α) や光補償点などで認められる.αは, ミズキで最も大きく, ミズナラやコブシで小さく, コナラとカスミザクラは中間的な値を示す.強光照射下では, 光合成速度 (P*) は, コナラとミズナラでは照射直後から急激に低下するが, 他の樹種では少なくとも初めの5分間はほぼ一定値を保ち, その後の低下も比較的ゆるやかである.60分間の強光照射によって生じるPmaxの低下は17から35%の範囲, αの低下は28から55%の範囲にあり, 樹種によるちがいは明瞭である.しかし, 各樹種のPmaxとαの低下率は, P*の低下率と無関係である.林床において, 弱光と強光をともに効率よく利用しているとみられるのが, ミズキである.コナラとミズナラは, 弱光あるいは強光利用のいずれの面でもとくに有利な光合成特性をもたない.