生物環境調節
Online ISSN : 2185-1018
Print ISSN : 0582-4087
ISSN-L : 0582-4087
遮光処理が一段摘心栽培トマト個体の生長, 果実収量および各器官への乾物分配に及ぼす影響
佐藤 治雄柳 智博平井 宏昭上田 悦範織田 弥三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 32 巻 4 号 p. 231-237

詳細
抄録

遮光処理が一段摘心栽培トマト個体の生長と果実収量および光合成産物の分配に及ぼす影響を明らかにする目的で, 実験1では春から夏に3段階の遮光率 (0%, 50%, 70%) で, 実験2では夏から秋の期間に4段階の遮光率 (0%, 25%, 45%, 80%) で, ロックウール養液耕により“ハウス桃太郎”を用いて各器官の乾物生長と果実収量について調査した.
実験1と実験2の個体乾物重は遮光率の増加に伴って減少した.実験1および実験2ともに遮光率が高まるにつれてほとんどの器官乾物重と果実収量が減少した.実験2の遮光率80%区では着果が皆無であった.また, 遮光率0%区における各器官乾物重を100%として実験1の遮光率0%, 50%, 70%と実験2の遮光率0%, 25%, 45%の6処理間には器官乾物構成比に顕著な差異が認められなかった.処理開始後10日目から40日目の期間 (A) では, 遮光率が高まるにつれて果実への乾物分配率が減少し, 茎, 葉身および根への乾物分配率の高まることが認められた.40日目から70日目の期間 (B) では, 遮光率0%, 25%および45%で果実への乾物分配率が, Aに比べて増加することが認められた.
収穫盛期の器官乾物構成比には処理間差異が認められなかったが, 光合成産物の分配には遮光の影響が認められた.トマト個体は着果した場合には, 低日射条件ほど果実肥大初期には葉身に光合成産物を分配して栄養器官の生長をはかるが, 果実肥大後期には日射条件にかかわらず果実への光合成産物の分配を増加させる.その結果, ある程度低日射条件でも果実への光合成産物の分配率が高いものと考えられる.

著者関連情報
© 日本生物環境工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top