生物環境調節
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クエン酸鉄 (III) アンモニウム溶液浸漬法による鉄高含量葉菜類の生産: 処理溶液のpH・鉄濃度と葉部の鉄含量との関係
井上 興一梅垣 由記近藤 悟眞田 和明横田 弘司
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1997 年 35 巻 1 号 p. 55-62

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抄録
鉄を高含量に含む葉菜類の生産を目的として, 葉菜類の根をpHおよび鉄濃度を2段階に変えたクエン酸鉄 (III) アンモニウム溶液に12時間または24時間浸漬し, 葉部の鉄含量の増加の有無を検討した.この処理は, 温度27℃, 相対湿度45~55%, PPFD380μmolm-2s-1に設定した人工気象室で行った.シュンギク (品種: 大葉春菊) では全処理区において葉部に障害が発生したが, ホウレンソウ (品種: リード) ではpH3および4のFe濃度100mgL-1溶液で24時間処理した場合に障害が認められた.同じFe濃度溶液の場合, pH4処理よりpH3処理において葉菜類の葉部Fe含量が明らかに上回った.また, 同じpH溶液の場合, Fe濃度100mgL-1処理の葉部Fe含量がFe濃度50mgL-1処理の場合を上回った.ネギ (品種: 博多黒ねぎ) では, pH3の鉄濃度100mgL-1溶液を24時間処理した場合, 最も高い葉部鉄含量 (79.5±9.3mg (kg新鮮重) -1) を示し, この値は対照区の場合の約8.0倍であった.ホウレンソウでは, pH3の鉄濃度50mgL-1溶液を24時間処理した場合, 障害を発生しないで最も高い葉部鉄含量 (102.7±12.5mg (kg新鮮重) -1) を示し, この値は対照区の約10.0倍であった.
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© 日本生物環境工学会
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